昨年末、今までに経験したことのない緊張感の中で1軒の家が竣工した。
場所は宮城県南三陸町 「歌津」という初めて耳にしたときから心に残る地名。
建主は一家で漁師の仕事をされていて、地元ではとても広く名前が通った方だった。
初めてお会いした2012年の夏以来ずっとお世話になっている。
歌津に行く度に、漁の仕事の話をしてもらえるのがとても楽しかった。
打合せの側で熱心に網をつくっている方がまわりにおられた。
網の深さや網目の細さは魚の種類によって違うらしく、CADで描いているということに驚いたことが印象に残っている。
打合せを重ねると、この地域ならではの間取り、部屋の使い方、
風習が漁の生活も多分関係が深いのだろうと感じるようになってきた。
同じ地域の被災を受けていない住宅や震災後に建った住宅を見せて頂いたりした。
いざ設計業務が始まり、仮設住宅で何時間も図面と模型を見ながら打合せに
付き合って頂いたことは本当に思い出深い。
自分は現場が始まってからはずっと常駐していたわけではないが、
毎日のように現場に足を運んで現場監督や職人さんを気遣って頂いた。
上棟式のときにMさんがされた挨拶の中で
「家族みんなが一つ屋根の下で笑って暮らせる家に早く住みたい」
という言葉が未だに忘れられないでいる。
また帰りの度にご家族がわざわざ外に出てきてくれて
「気を付けで帰ってな」と言って頂いてとても温かかった。
まだ未熟でなかなか慣れない部分もあり、いろんな方を巻き込んで手間をかけたなあと今になって思う。でも担当できて本当に本当に良かったし、Mさんとの繋がりをずっと忘れないでいたいと心から思います。
そして、歌津の方と私達を繋げてくれた石巻の職人さん、一緒に家づくりに取り組んで頂いた皆さんへの感謝を忘れないようにしたいと思います。
正直まだ全然書ききれませんが、報告の一つとさせて頂きます。